浪速の名橋などの土木施設の調査記録

大阪府内の名橋調査記録

2024.10.08

第3回大和川沿いの橋梁見学会報告(2023年12月2日開催)

 大和川は、治水のため、1704年(宝永元年)の320年前に柏原駅付近(新大和橋辺り)から西に付替えられ大阪湾に流入している。この区間の新大和川は一定の川幅で付替られたため、下流の府道29号に架かる阪堺大橋までに架かる橋は200m前後の橋長で揃っている。今回の調査区間での最古の現橋は、1930年(昭和5年)に建設の遠里小野橋[8径間割]、最新は2013年(平成25年)に架替の下高野橋[3径間割]であり、半世紀間の橋梁技術の変遷が見られる。一方、大和川の付替に当たる区域は、立退、移転の歴史が残っており、両岸に同じ地名を持つ箇所、移転・縮小させられた寺社、市区境界の飛地などが現存している。大和川大橋下流の左岸では、阪神高速大和川線の建設に伴いスーパー堤防が一部完成し民家も移転している。全行程10㎞であるため、参加者の体力に合わせて徒歩と路線バスの利用とした。

実施日   : 2023年12月2日(土)

見学対象施設: 喜連瓜破高架橋、瓜破大橋下高野橋、阿麻美許曽神社、行基大橋吾彦大橋

遠里小野橋大和川大橋スーパー堤防阪堺大橋

参加者   : 古川、祝、下土居、田中、石原、野坂、武

行程

 概要

 瓜破大橋から阪堺大橋までの大和川中流域の橋梁群は、江戸時代に付け替えられた新大和川に架かっている。新大和川は現在の河道部の掘削土を両岸に盛り上げる工法が採用でき、僅か1年足らずで築造されている。そのため上流域と異なり、堤防上から眺めると天井川であることがよく判る。川で遮断された従来の通行を補償するため旧街道上に、明治中期までは木橋、明治後期以降は永久橋として鉄橋が架設されてきた。

 瓜破大橋は、大阪内環状線と阪神高速松原線と2階構造で一体となっており1980年(昭和55年)に架橋された。下高野橋は2013年(平成25年)に架替えられた鋼箱桁橋であり、スレンダーな印象の外観となっている。行基大橋は、交通量の増大に対応するため1978年(昭和53年)に新設された連続合成桁橋である。遠里小野橋は、この区間で最古の1930年(昭和5年)に架橋された鋼桁橋であり、車道部が建設当時のままで供用されている。当時では最大級とみられる23.8mの支間長であるが、2017年(平成29年)に補修されており丁寧な維持管理がされている。大和川大橋は1937年(昭和12年)に大動脈である国道26号に架橋されており、2014年(平成26年)に耐震補強等の補修がされている。阪堺大橋は、遠里小野橋、大和川大橋と同時期に架橋されているが、1986年(昭和61年)に架替えられた連続鋼桁橋である。

 大和川中流域は堤防上の自転車・歩行者専用道から眺めると、ほぼ一定の川幅であることがよく判る。見学した区域の寺社は幅180mで帯状に延びる新河川工事に伴って移転・縮小を強いられており、大和川左岸側の阿麻美許曽神社の周辺と参道は右岸側と同じ大阪市区域の地名となっており、新大和川で分断されたことを示している。大和川大橋から阪界大橋までの左岸側には阪神高速大和川線が開通しており、これに合わせてスーパー堤防が一部完成しており、地域の防災拠点としての機能も期待されている。