藤澤さんの思い出

                           平尾修一(元小学校長)
                                

 私がCVVに入れていただいて心強く仕事を進めて行くことができ、いつも励ましていただいた方の一人が藤澤さんです。
 私は大阪の橋めぐりについて、現職の時から少しずつ研究を進めていましたが、「大正橋」のことを調べていた時、大阪市建設局橋梁課の方のお世話になり、2代目の大正橋の設計者である日種さんにお会いしました。日種さんからは、大正橋設計の由来や大阪の橋のことを書いた本や資料を数点いただき、その後の橋の研究にとても役に立ちました。その日種さんと共に大阪の橋作りに活躍され、私が小学校の校長をしていた平成元年から、同じ大阪市の橋梁課長として力を発揮しておられたのが藤澤さんでした。CVVという団体や土木という、全く畑違いの物に対して戸惑いを感じていた私にとって、そのことがとても親しみを覚えた一つの理由です。(もっとも、「土木」の果たした役割については、学校へ送られてきた「土木の絵本『おやとい外国人とよばれた人たち 』(全国建設研修センター企画・発行)」を読む中で、再認識させられていたように思っていますが)

 藤澤さんとの最初の対面は、2003年1月のCVV新年会において「総合的な学習」についてお話をしてもらえないかという依頼があったときです。お話をすることに決めたのは、妻がお子さんを担任させていただいた、当時のCVV幹事長の川谷先生からの依頼があったせいもありましたが、厚かましくも多くの先輩方の前で話させていただき、自分にとって大きな経験になりました。

 次は、大阪市立中泉尾小学校の「大阪探検」の取り組みにおいてです。中泉尾小学校では6年生の総合的な学習として、「国際交流」を年間計画に入れ、その中で、「外国の人々に大坂を語ろう」ということで「大阪探検」をすることになっています。6年生を各グループ10人前後で6つに分け、各グループで知りたい場所や橋・川を訪ねて歩くのですが、このガイド役をCVVで受け持つという企画です。15年度も行いましたが、14年度は「先ず地元のことが語れなくては」の思いもあって、藤澤さんが交渉・企画されて大正区内の造船関係の工場見学や渡し船に乗るコースなどを設定されたのでした。
大阪探検のガイダンスは藤澤さんと私で行いましたが、そのとき、私が心を打たれた出来事が2つありました。

 一つ目は、橋の説明をされるのに、パソコンのパワーポイントを使って説明されたこと。パソコンの機能を十二分に活用され、橋への愛情を込めて、児童たちに分かり易く説明しておられる姿が、今も目に浮かびます。
 二つ目は、その説明の中で、「舌癌で手術をし、聞き苦しいこともあるかもしれないけれど、しっかり聞いてほしい」と自分の現在をはっきりと語られたこと。自分の体について、しかも癌ということについて語ることを躊躇せず児童たちに話された姿に、私は今生きている自分を大切にし、しっかり生きていくことが大事なのだということを教えられたような気がします。児童たちもこの言葉は心に残ったようで、後に藤澤さんが入院なさったと聞いて児童たちが藤澤さんにお見舞い状を送ったと聞いています。

 それにしても、多くの皆さんがご承知の通り、藤澤さんのパソコン活用能力はずば抜けたものでした。明石海峡大橋「橋の科学館」での「名人証」作りやホームページの企画・作成でも素晴らしいものがありました。そんなことに関連したもう一つの出来事が最後の出会いです。
 藤澤さんの体を癌が再度蝕み始めた頃、私は市民見学会として「上町台地にある緑の森を訪ねて」の企画・運営を任されることになりました。この企画をCVVのホームページに載せていただくことになったのですが、写真つきメール送信の仕方がよくわかっていなかった私は、体の調子がよくなかった藤澤さんにとてもご迷惑をかけてしまいました。それにもかかわらず、藤澤さんは、トップページからリンクして見学のページへ飛ぶように工夫して、ホームページに掲載して下さいました。そして、見学が一応成功裏に終了した後には、労いのメールまで頂戴したのでした。

 以上書いてきましたように、私が手取り足取り導いていただき、ご支援いただいた藤澤さんですが、藤澤さんが抱いておられた一つの夢、「自分が卒業した母校(大阪市立大宮学校)において、ミニ課外授業をする」お手伝いができなかったことが心残りです。藤澤さんが抱いておられた場所や事柄等の予習をしておいて、いつの日か、大宮小学校でその実現を図るようにしたいと思っていますが、その夢を書いたメール「Reミニ課外授業に向けて」を藤澤様のご冥福を祈りつつ、最後に紹介させていただきます。  合掌。


  「藤澤さんのメール」

 メールをいただきありがとうございます。私の体調ですが、退院はしましたものの毎日の勤務は無理の状態で、体調のよい日には出勤しているというところです。
 小学校での取り組みですが、次のようなことを考えています。
   1.橋の教室・・・橋の話と模型の橋づくり(紙や割箸を使って)。
   2.学校から淀川に出て、城北菅原大橋〜赤川鉄橋を回って堤防やわんど
    や橋の見学案内。   

   3.城北川から毛馬そして大川上流を経て、地下鉄都島までの見学案内。
   4.私が小学校時代の城北運河、江野川、淀川などについて語る。
   (私は歴史などは苦手なので、文献などは持っていません)

 以上のようなことを考えていますが、まだ体力が回復しておりませんので、今しばらくご猶予下さい。
 
 最後に親ばかですが、長女のテレビ番組が変更になります。4月12日から毎週土曜日午前9時NHK教育TVで「21世紀ビジネス塾」、4月6日から毎週日曜日午前7時大阪TVで「賢者のマネー」にキャスターとして出演しています。ご覧いただければ、幸いです。
 東京で、小学生向けにボランティアでミニ講座をして、子供が喜んでいたと申しており、私にもボランティアを勧めております。 2003年3月19日 
 


                                                      

                         
         
             中泉尾小学校の「大阪のまち探検隊」
                        

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